○稲敷市政治倫理条例
平成22年6月16日
条例第10号
(目的)
第1条 この条例は、市政が市民の厳粛な信託によるものであることを認識し、その受託者たる市長、副市長、教育長(以下「市長等」という。)及び市議会の議員(以下「議員」という。)は、市民全体の奉仕者としてその人格と倫理の向上に努め、いやしくもその権限又は地位による影響力を不正に行使して、自己特定の者の利益を図ることのないよう必要な措置を定めることにより、市政に対する市民の信頼に応えるとともに、市民が市政に対する正しい認識と自覚を持ち、もって公正で開かれた民主的な市政の発展に寄与することを目的とする。
(市長等、議員及び市民の責務)
第2条 市長等及び議員は、市民の信頼に値する倫理性を自覚し、市民に対し自ら進んで、その高潔性を明らかにしなければならない。
2 市民は、主権者として自らも市政を担い、公共の利益を実現する自覚を持ち、市長等及び議員に対し、その権限又は地位による影響力を不正に行使させるような働きかけを行ってはならない。
(政治倫理基準)
第3条 市長等及び議員は、次に掲げる政治倫理基準を遵守しなければならない。
(1) 全体の代表者として品位と名誉を損なうような一切の行為を慎み、その職務に関して不正の疑惑を持たれるおそれのある行為をしないこと。
(2) 全体の奉仕者として常に人格と倫理の向上に努め、その地位を利用していかなる金品その他の財産上の利益を授受しないこと。
(3) 市が行う工事等の請負契約、下請工事、業務委託及び一般物品納入契約に関して特定の業者を推薦、紹介する等有利な取り計いをしないこと。
(4) 市職員等の公正な職務の遂行を妨げ、その職権を不正に行使するよう働きかけないこと。
(5) 市職員等の採用、昇格又は異動に関して推薦紹介をしないこと。
(6) 政治活動に関して、企業、団体等から寄附を受けないものとし、後援団体についても政治的道義的批判を受けるおそれのある寄附等を受けないこと。
(7) セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメントその他のその地位を利用して嫌がらせをし、強制し、又は圧力をかける行為及び人権侵害のおそれのある行為をしないこと。
(8) 稲敷市暴力団排除条例(平成23年稲敷市条例第11号)第2条第1号に規定する暴力団、同条第2号に規定する暴力団員若しくは同条第3号に規定する暴力団員等又はこれらと社会的に非難されるべき関係を有する者と利害関係を持たないこと。
2 市長等及び議員は、政治倫理に反する事実があるとの疑惑を持たれたときは、自ら清い態度をもって疑惑の解明に当たるとともに、その責任を明らかにしなければならない。
(請負契約等の辞退)
第4条 市長等及び議員が役員をし、若しくは実質的に経営に携わっている企業又は市長等及び議員の配偶者若しくは2親等以内の親族が経営する企業は、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第92条の2、第142条、第166条及び第180条の5の規定の趣旨を尊重し、市が行う工事等の請負契約、業務委託契約及び一般物品納入契約を辞退し(1回の契約につき20万円未満の契約を除く。)、市民に疑惑の念を生じさせないよう努めなければならない。
2 前項に規定する「実質的に経営に携わっている企業」とは、次に掲げるものをいう。
(1) 市長等及び議員が資本金その他これに準ずるものの3分の1以上を出資している企業
(2) 市長等及び議員が株式会社の株式を3分の1以上保有している企業
(3) 市長等及び議員が年額5万円以上の報酬(顧問料等その名目を問わない。)を収受している企業
(4) 市長等及び議員がその経営方針又は主要な取引に関与している企業
3 前2項の規定に該当する市長等及び議員は、市民に疑惑の念を生じさせないため、責任をもって関係企業における工事等の請負契約、業務委託及び一般物品納入契約の辞退届を提出しなければならない。
4 前項の辞退届は、市長等及び議員の任期開始の日から30日以内に、市長及び議員にあっては議長に、副市長、教育長及び議長にあっては市長に提出するものとする。
5 市長及び議長が、前項の辞退届を受理したときは、相互にその写しを送付しなければならない。
6 市長は、辞退届の提出状況を広報紙等で速やかに公表しなければならない。
(所得税等納付状況報告書)
第6条 議員は、毎年6月1日から6月30日までに、所得税、市県民税、固定資産税、自動車税、軽自動車税及び国民健康保険税の前年度分の納付状況を記載した所得税等納付状況報告書(以下「納付状況報告書」という。)に規則で定める証明書類を添えて、議長に提出しなければならない。
3 議長は、前2項の規定により提出された納付状況報告書を、当該議員の任期満了となる年度の末日まで保管しなければならない。
(政治倫理審査会の設置)
第7条 政治倫理確立のために必要な調査及び審査を行うため、地方自治法第138条の4第3項の規定に基づき、稲敷市政治倫理審査会(以下「審査会」という。)を置く。
2 審査会の委員は、6人とし、委員は地方自治の本旨に理解があり、かつ政治倫理等の審査に関し専門的知識を有する者及び地方自治法第18条に規定する選挙権を有する市民のうちから、市長が公正を期して委嘱する。
3 審査会の委員の任期は4年とし、再任を妨げない。また、委員の定数に欠員が生じた場合は、市長は速やかにこれを補充するものとし、補充された委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、委員は、任期が満了した場合においても、後任の委員が委嘱されるまでの間は、その職務を行う。
(審査会の職務)
第8条 審査会は、次に掲げる職務を行う。
(1) 第11条第1項の請求を受けた市長又は議長の諮問に応じて調査の対象となった市長等又は議員に意見陳述の機会を与え、調査及び審査を行い、その結果を報告すること。
(2) 前号に定めるもののほか政治倫理に関し、諮問に応じて審議及び報告をすること。
(審査会の会議)
第9条 審査会に会長及び副会長をそれぞれ1名ずつ置く。
2 会長及び副会長は、委員の中から互選する。
3 会長は、審査会を代表し、議事その他の会務を総理する。
4 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき、又は会長が欠けたときは、その職務を代理する。
5 審査会の会議(以下「会議」という。)は、会長が招集し、会長が議長(以下「審査会の議長」という。)となる。ただし最初に行われる審査会の招集は、市長が行うものとする。
6 会議は、委員の半数以上が出席しなければ開くことができない。
7 審査会の議事は、出席した委員の過半数で決し、可否同数のときは、審査会の議長の決するところによる。
8 審査会の会議は、公開するものとする。ただし、やむを得ず非公開とするときは、出席委員の3分の2以上の同意を必要とする。
9 審査会の委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。またその職を退いた後も同様とする。
10 前9項に定めるもののほか、会議の運営等に関し必要な事項は、会長が定める。
(審査会の委員の報酬及び費用弁償)
第10条 審査会の委員の報酬及び費用弁償は、稲敷市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例(平成17年稲敷市条例第37号)の定めによる。
2 市長又は議長は、前項に定める調査請求を受けたときは、調査請求書の記載事項及び添付書類の内容について審査し、調査請求に不備があるときは、請求のあった日から30日以内にその補正を命ずることができる。
3 市長又は議長は、前項の定めにより調査の請求がなされたときは、調査請求書(添付資料を含む。)の写しを速やかに審査会に提出し、調査を求めなければならない。
4 審査会は、前項の規定により調査を求められたときは、調査を求められた日から原則として60日以内にその調査結果について報告書を作成し、市長又は議長に提出しなければならない。ただし、やむをえない理由により調査ができない場合においては、30日を上限に期間を延長することができる。
5 市長及び議長は、前項の定めによる報告の結果を尊重し、調査結果を決定するとともに、その報告があった日から7日以内に、請求者に通知しなければならない。
(調査結果の広報)
第12条 市長又は議長は、前条第5項で定める決定をした場合は、広報紙等で速やかに公表しなければならない。
(職務関連犯罪容疑による起訴後の説明会)
第13条 市長等及び議員が、刑法(明治40年法律第45号)第197条から第197条の4までの各条及び第198条に定める罪並びに公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律(平成12年法律第130号)に定める罪その他職務に関連する犯罪(以下「職務関連犯罪」という。)の容疑による起訴後、引き続きその職にとどまろうとするときは、市長及び議員にあっては議長に、副市長、教育長及び議長にあっては市長に、市民に対する説明会の開催を求めなければならない。この場合、当該市長等又は議員は、説明会に出席し釈明しなければならない。
2 市民は、前項の定めによる説明会が開催されないときは、法第18条に定める選挙権を有する者50人以上の連署をもって、説明会の開催を請求することができる。
3 前項の開催請求は、起訴後の説明会にあっては起訴された日から50日以内に、市長及び議員にあっては議長に、副市長、教育長及び議長にあっては市長に対し行うものとする。
4 市長又は議長は、前3項に定める開催請求のあったときは、説明会開催の適否を決定し、告示するとともに請求者に対して通知する。
(刑の確定後の措置)
第15条 市長等又は議員が第13条第1項に定める罪により有罪判決の宣告を受け、刑が確定したときは、公職選挙法第11条第1項の定めにより失職する場合を除き、当該市長等又は議員は、市民全体の代表者としての品位と名誉を守り、市政に対する市民の信頼を回復するため、辞職手続きをとるものとする。
(条例の見直し)
第16条 この条例は、社会情勢の変化、市民の意見等を踏まえ、必要に応じて見直しを行うものとする。
(委任)
第17条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附則
この条例は、平成22年12月22日から施行する。
附則(令和4年条例第16号)
この条例は、令和4年12月22日から施行する。